今日は茨木のり子さんの詩です。
子どもの頃、背中を丸めて姿勢を悪くしていると、時々、父から背中に定規(じょうぎ)を入れられました。学校で使っていた30㎝の竹製の定規です。
茨木さんの詩は、おとなになって姿勢を注意されることもなくなった私の背中に、いきなり定規を入れられた思いがしました。
倚(よ)りかからず
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威(けんい)にも倚りかかりたくはない
ながく生きて
心底(しんそこ)学んだのはそれぐらい
自分の耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
(詩集「落ちこぼれ」より 理論社)
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年取った今も、この詩を思い出すと背筋が伸びます。